煙の行方
「煙の行方」
私が小学一年のニ学期から小学三年の一学期まで住んでいた家のまん前には、川があった。
その川を隔てたむこうに古びた平屋建ての家があり、その家の前でいつも
女の人が焚き火をしていた。
その人は、いつもいつも、なにかを燃やしていた。
私たち姉弟は、その光景をしばらくの間、川を隔てたこっちがわで見ていた。
そのうちに私たちもすぐ家の前にある橋を渡って、その焚き火の前にいき
その女の人の手伝いをしていっしょにいろんなものを燃やすようになっていた。
私たち姉弟は、すっかり炎の魔力にとりつかれてしまったようだった。
その時その女の人に教えてもらったことがある。
「煙はきれいな人のところに行く」
ということだ。
「いややわあ。この煙私のとこにばっかり来るわ」
とかなんとか言いながら私が煙たがっていた時のことだ。
「覚えときや。煙はな。きれいな人のところに行くんや」
その女の人は、そう私に言ったのだ。
本当かどうかはわからないけれど、たぶん、そんなことはでたらめに決まっているのだろうけれど、幼い私にその言葉は(子どもなりに
自尊心をくすぐられたのだろうか?)うれしく、かつ、とても魅力的に響いた。
だからよく覚えている。
「煙はきれいな人のところに行く」
つづく